「ARC70」 北海道建築設計監理協会 昭和45年より
1994年、私は社会人1年生として内装材販売会社の営業マンになりました。すぐに約100件の得意先リストを持たされて外回りが始まりました。担当エリアは北区と東区で、自宅兼事務所のような内装工事会社へ商品を売り込むのが任務でした。社長が出かける前の早朝や帰宅後の夕食前後を狙っての訪問が重要だという会社命令を素直に実行しました。
「とにかく会って話すこと」
「断られてからがスタート」
「最後は泣き落とし」
前時代風の営業方針に従い強烈な売上目標に向かって、がむしゃらに駆けずり回りました。
さて、この「丘珠医院」は、体を壊してお世話になった病院なのではなく、得意先へ向かうときの目印にしていた建物なのです。
目印としたのは、その特徴的な外観です。装飾の凝らし具合が時代にそぐわなく、見る方が照れ臭くなるほどでした。しかし、逆の新鮮さもまた私を惹きつけるのでした。その時、まだほんの築25年だったとは信じられません。若い時の方が建物の経年を敏感に感じるのか、当時の方が建築意匠の移り変わりが目まぐるしかったのか、もしくはわかりやすいレトロ感が心に響いたのかと思います。
2000年以前は、このような建物がまだあちこちにたくさん残っていました。