そのようなな背景の中に生まれた日本生命ビル(1961年 久米建築事務所)には、際立った美しさがあると先生はふれられました。設計者は、札幌駅前通りの混沌とした状況を十分に意識したうえでこの建物の設計に挑んでいるといいます。
①無機的デザインを肯定的に捉え、その限界の中にデザインの質の高さを追及している。
②例えば、白タイルの固い質感
③窓周りのプロポーションの推敲
④ディテイルの端正さ
⑤深い開口の陰影に現れる、わずかな表情の変化
そう言われてみれば、私にだって理解できる気になってきました。
大学の助教授がひとつの現代建築を称えるという行動は、その裏で同時代の建築批評を行っているに違いありません。下記の建築が「デザイン無関心的」「デザイン過剰的」にあてはまるか、あてはまるならそれらのどちらになるかと眺めてみますと、建築を見る力が養われそうです。(笑)
1960年
千代田生命ビル(設計 大成建設)
1961年
北海道拓殖銀行本店(設計 三菱地所)
札幌中央郵便局(設計 郵政省)
1962年
北海道ビル(設計 三菱地所)
第百生命ビル(設計 石本建築)
1963年
北海道新聞社(設計 三菱地所)
三井生命ビル(設計 久米建築事務所)
伊藤ビル(設計 伊藤組)
1964年
北海道銀行本店(設計 山下設計 田上建築)
ニッセイビルが建て替わる前にこの話を聞いていたら、しっかり眺めに行ってみたかったものです。