suteki/2014
歴史に埋もれてしまった前田建築研究所
2014.07.14
この会社のつくる住宅の３本柱は、「無落雪屋根」「高断熱」「ペチカで全室暖房」でした。創業者の山口昭さんは、これらの武器を引っ提げて、１９７０年にデビュー宣言をしたと伝えられています。
しかし当時は、北海道における住宅の屋根というものは三角形などの勾配付きで雪を滑り落とすのがが当たり前、という世の中です。１９６９年には住宅金融公庫が木造住宅にも適用され、建てればどんな家でもバカバカ売れるという時代、そして、本州資本の住宅メーカーが札幌に進出してきて内外の乱戦が始まった時代です。そのような背景の中、屋根に雪を乗せたままにしておくという常識への挑戦は、世間から変人扱いされるか、または無視をされたそうです。ところが、落雪被害の問題がクローズアップされるに従い、またこの会社の研究姿勢に賛同しはじめた人々によって、木の城たいせつ（旧耐雪ハウス）は次第に注目されはじめたのだそうです。
これが木の城たいせつのスタートと伝えられていますが、本当の「無落雪屋根の創始者」は、札幌の設計事務所「前田建築研究所」の前田敏雄さんなのです。
前田さんと木の城たいせつ創業者の山口昭さんは、１９６０年の「和田義雄邸」建設時に設計者と施工者の立場で初めて協力体制を築いたそうです。その後、前田さんによる「無落雪屋根」のコンセプトを山口さん（当時 ㈱匠建設～㈱弘匠建設）が実験建設しながら、いくつかの住宅を建ててきました。これら試行錯誤の「前田・山口コンビの時代」の住宅を眺めてみますと、後の「木の城たいせつ」のルーツが感じられます。 ２０１４．７．１４
１９６０年 和田邸 施工 ㈱匠建設 札幌市中央区宮の森１条
２００７年に無落雪屋根をからめた増改築 現存
今もまだ残っている建物。その「穴」がどうなっているのかはわかりません。
１９６６年 ユタカインテリアセンター （現ユタカ商会の旧社屋） 現存 施工 ㈱弘匠建設 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
ユタカインテリアセンターの平面図 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
１９６６年 Ｓ邸 現存せず 施工 ㈱弘匠建設 江別市大麻東町１７ 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
１９６８年 Ｔ医院 現存せず 施工 ㈱弘匠建設 札幌市西区山の手５条２丁目１－２ 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
１９６８年 Ｋ邸 現存 施工 ㈱牧内組 江別市大麻東町９－３ 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
１９６７年 Ｔ邸 現存せず 施工 ㈱牧内組 札幌市西区西野３条 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
Ｔ邸 ２０１４年の姿 （２０１５年解体） とても大事に住まわれていた
１９７０年 Ｙ邸 ２０１６年解体 施工 五城建設㈱ 札幌市豊平区福住１条 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
１９７２年 Ｋ邸 現存せず 施工 ㈱牧内組 札幌市中央区円山西町 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
１９７２年 Ｓ邸 現存 施工 ㈱定蛇組 江別市文京台 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
Ｓ邸 ２０１３年現在 とても大事に住まわれている
１９７３年 Ｈ歯科医院 現存 施工 ㈱新武工務店 札幌市白石区南郷通 最後の作品か？ 「北海道建築設計監理協会作品集 ＡＲＣ６７～７３」より
Ｈ歯科医院 ２０１４年現在 治療の際は、ここへ行ってみよう
恐らく前田物件① 現存 江別市中島
恐らく前田物件② Ｎ邸 現存 札幌市東区北３７条東
恐らく前田物件③ Ｙ邸 現存 札幌市厚別区青葉町
恐らく前田物件④ Ｋ邸 現存 札幌市東区北１３条東
恐らく前田物件⑤ 現存 札幌市西区発寒６条
恐らく前田物件⑥ ２０２０年解体 札幌市西区八軒１０条
恐らく前田物件⑦ Ｓ邸 現存 札幌市豊平区月寒東５条