素敵な建築

suteki/2020

北海道百年記念塔の前震デザイン その1

2020.01.15

札幌市豊平区

1963年

久米建築事務所 井口健   施 工 竹中工務店

西側より

国道36号線沿いの正面

裏側

 この建物は、北海道百年記念塔を設計された井口健さんが久米建築事務所の設計監理スタッフとして道庁新庁舎新築工事現場を担当される前に手がけた物件だそうです。お伺いしたところによると、1963年、井口先生25歳の時の仕事だそうです。国道36号線沿いに某会社の札幌営業所として建てられ、今もそのまま使われています。井口先生ご本人から「あれも僕がやったんだ。」と教えて頂いた建物ですが、このたび、やっとしっかり眺めに行きました。

 もちろん見るべきポイントは、建物の屋上にそびえる塔、ではなく、外壁面に幾つか打たれている縦方向2連のリブです。このリブの隙間の壁は、先端に至ったところで少し下がっているように見えます。きっと屋上の水をこのリブに沿って地面へ流す縦樋の役目をしているのではないでしょうか。であれば、リブの間は汚れついて少し黒っぽくなるでしょう。しかし、そうなっていないところを見ると、役目無しの意匠なのでしょうか。

 リブの役目は置いておいて、やはり、リブのもたらす細い影と北海道百年記念塔の縦長の隙間の類似点に迫ってみたいと思います。リブをじっと眺めていると、北海道百年記念塔が透けて見えてきます。北海道百年記念塔のデザインは、塔のためにデザインされたものではなく、井口先生の心の中から滲み出てきたものと思われてきます。天に伸びていく2本の線、決して1本ではないというところが建築的と言えるかもしれません。



 井口先生は2本の線に憑りつかれているようです。それが何をきっかけに、いつから、何故、というところを探ってみたいです

 ところで、リブの天辺はやはり、わずかですがナナメカットされているのでした。

竣工時 井口先生より 

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