素敵な建築

suteki/2020

空間に建物をどう置くか

2020.05.20

札幌市

現存

1991年

ナカヤマアーキテクツ
 ある空間に建物をどう置くか、設計者にとっては腕の見せ所になりましょう。この賃貸アパートには、そんな設計者の心意気、挑戦を見せつけられるようです。

 個性的な土地ならば、庭や周囲の風景と建物にどう折り合いをつけるか検討することで自然とうまくいくのでしょう。しかし、条丁区画の四角い土地に四角い建物を置くなんて、何とも面白くありません。こんな場所だからこそ、まるで映画をみているかのように次々と場面が展開する配置にしてみたのではないかと思われます。建物は1つではなく、いくつかに分けられていますので、それぞれの建物とそれらに対峙する自分を意識させられます。このような考えを実現できた時代とそれを理解する施主の余裕、札幌には珍しい例になったような気がします。

いったん上がって下りる

下りた先を進んで曲がると、別棟が現れる

更に進むと、その先には何やら複雑な展開が

 1991年に建てられたものですが、3つのアパートが互いに関連付けられながら配置され、古い町屋の風景とも近未来の街のようにも見えます。当時のデザインにありがちな表層のみのテクニック、過去のデザインからの安易な引用で飾り立てた建築とは違って、優雅な気分になります。

「容積の大きなアパートにしておけば、もっと効率的に投資の回収ができるじゃないか。」
「しかし、それではあんまり粋ではないでしょう。」

 返答者さんの気持ちを忘れないようにしたいものです。
Top