素敵な建築

suteki/2020

札幌がうらやむ旭川のモダニズム建築 旭川市青少年科学館

2020.11.23

旭川市常磐公園

現存

1963年

旭川市建築課

新建築1963年12月号より

 旭川のモダニズム建築と言えば旭川市庁舎へ直行しなければなりませんが、ちょっと回り道をして旭川市青少年科学館に行ってみました。

 軒庇の大きく張り出した外観は、常磐公園の千鳥ヶ池を背景に豪華客船のような印象を与えてくれます。コンクリート打ちっぱなしの柱梁や玄関上に重々しくせりあがる庇を見て、東京文化会館チックな雰囲気だなと思いました。考えてみますと、札幌には60年代のコンクリート打ちっぱなしモダニズム公共建築がないことに気がつきました。その空白の10年間には札幌では軽快なカーテンウォールを使った物件が多いので、こんな重厚感ある建築が今も現役で使われている旭川市青少年科学館をうらやましく思いました。

新建築1963年12月号より

 コンクリートとレンガのコンビネーションは、1958年の旭川市庁舎を引き継ぐ外観です。聞くところによりますと、市庁舎設計に際して佐藤武夫先生とチームを組んだ旭川市建築課のスタッフさんが、この建物を設計されたということです。ということは、この建物の設計において5年前の市庁舎のデザインと連続性を企てたと考えられます。新たな時代の先進デザインに飛びつくことなく、冷静に旭川全体のまちづくりを意識したと思われる姿勢を考えますと、新建築1963年12月号「北海道の建築」のトップに紹介された理由がわかるような気がしました。

モノクロ画像 新建築1963年12月号より

 館内はスキップフロアでホールは吹抜けています。設計スタッフ佐藤暎さんによる紹介稿によりますと、吹抜けに面した壁画は天体や自然科学をモチーフにしたものであるということです。香川県庁舎の壁画のようなデザインですが、天然状態のままの純な空気が良いです。

 ある建築に保存の力が加わったり、見学を意識した展示物になった途端、何かもう別なものになってしまったような気になってがっかりしてしまう気持ちを御理解いただけますでしょうか。進学や就職で東京に行ってしまった女の子が帰省した際、再会時に感じさせる違和感、これに似た感じと言えば、世の男性にはわかっていただけると思います。旭川市青少年科学館は、そんながっかり感を微塵も感じさせない安心感に包まれているのです。

モノクロ画像 新建築1963年12月号より

プラネタリウム内部と専用の入口

 この建物には、もう使われていない古いプラネタリウムがあります。ガラスの壁を突き抜けるコンクリートの箱のような専用入り口を通って2階のプラネタリウムへ登るワクワク感。 その階段は、高まる期待をますます強める螺旋階段です。子供たちだけでなく、大人たちだって心がはやる気持ちになったでしょう。
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