田上 義也 作品アーカイブス

1965

木村勇邸

1965年

札幌市中央区南12条西15丁目

現存せず

江本木材

田上義也建築作品抄 らいらっく書房 1966年より

田上義也建築作品抄 らいらっく書房 1966年より

 1965年は田上先生のダイナミックなデザインがほとばしる年であります。住宅設計の件数も多く、どの住宅も油の乗った田上先生らしさが感じられ、ひと目で良いから現物を見てみたいという欲求にとらわれます。

 この木村邸は、片流れ屋根で家全体を包んだ単純な形と思いきや、1階玄関ポーチから向こう側のガレージにかけていささか大きすぎるプレイリー風デザインの屋根をかけ、立体的に見せています。南面の居間から寝室にかけて4間にもまたがる大きな窓が開いていますが、これでは直射日光がきつすぎるのではないでしょうか。

 外壁をじっくり見てみますと、外壁面からブスッ、ブスッと梁材が飛び出していることに気がつきます。そして、その梁先は柱材に接続され、その柱材が軒天まで伸びているのが見えてきます。この軒の深さは90cmくらい、いやひょっとすると120cmくらいありそうです。この柱材の下端へ視線を下ろしていくと、今度は、空中に浮いた南面全体にも及ぶパーゴラだろうものに繋がっていることがわかりました。
 ということはですよ、屋根の軒天から柱材でパーゴラを吊り、その揺れ止めに外壁から伸ばした梁で掴んでいる、ということになりそうです。

 なんでこんなことになっているのか。
 施主の木村さんは、テラスの地面にパーゴラを支える柱を立ててくれるなとリクエストしたのでしょうか。田上先生、それじゃあ軒を深くしてそこからパーゴラを吊ってしまえと解決したのでしょうか。どちらにせよ、パーゴラのお陰で、文字通り、居間と寝室は程よい日光の遮りができたでしょう。

 このような外部の木造作は、現在の札幌ではなかなかお目にかかれません。
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