田上義也建築作品抄 らいらっく書房1966年
田上義也建築作品抄という本の中にその竣工時の写真が掲載されていました。トタンの破風板が、その先端で収斂していることがわかりました。こうすることで、曲面の壁面がより造形的に印象づけられます。ロンシャンの礼拝堂を意識した形であるように見えます。しかし、袖壁の左側は造形的なロンシャン風にも関わらず、右側は無機的にシンプル整然とさせていました。
こういう表現が田上先生の味でしょう。通常であれば純粋に造形性を押し出して完成させるべきところ、こうやって別の表現も入れてくるのです。この一筋縄ではまとめさせてくれないところが、複雑な味わいをもって深く印象に残るのです。このインパクト充分のKs邸が、時を超えて大事に住み続けられています。建主さんの満足、愛情が伝わってきます。