田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1962

北湯沢ユースホステル

tanoue/1962年

伊達市大滝区北湯沢温泉町

現存せず

神工業

カラーパース北海道ユース・ホステル協会20年史より

 田上先生の戦後作品の代表の1つに数えたい北湯沢ユースホステル。2年前に出来た支笏湖ユースホステルをさらに躍動的に組み立て直した独特の完成度が光っています。田上先生はこのユースホステルの設計意図を次のように説明されました。

 「~設計は環況に順応しつつ、さらに環況を衝動して『その風土とともに呼吸する』と云う私の考え方を、このホステルは意図しているのです。プランは十字体系で、低く地に這ふような両翼の中央がホール、左に食堂、右に女子宿舎、其他がその中に収められていて、窓は前面の美しい対岸に打ちいだかれて全風光を招待している。またその中心の後部から、高く蒼空を切って突き上げて無限を思はせる切妻の環況を衝動している。そしてこの強靭な屋根の中に男子宿舎が収められている。幾何学的な構成は、風雪、大きな破風屋根は、この静寂を破って周囲の寒冷に対決し、いかなる台風にもビクともしないでしょう。この作品は支笏湖ユース・ホステルのピラミット型の一環としてのヴァレ-ションで、若く新鮮なホステラーの魂を生きと発映せしめる、北方的な造形として、南条先生の精神を盛ったものである。」

田上義也建築作品抄 らいらっく書房 1966年より

 南条先生とは、この時、日本ユースホステル会長をされていた南条徳男さんのことで、建設大臣や農林大臣を務められた大物政治家でもありました。南条さんの精神というものが具体的にどのようなものだったのかはわかりませんが、支笏湖ユースホステルのデザインを超えるものを要求されたのかも知れません。

1947年 フランクロイドライト設計のユニタリアン教会Frank Lloyd Wright Taschenより

 田上先生は師フランクロイドライト設計のユニタリアン教会からインスピレーションを受けられたように思います。ライトは一般的な教会に用いられる尖塔を採用せず、形態と構造が生み出す三角の屋根に崇敬の念が湧くようにデザインしたそうです。これを北方的で且つ若き衝動的なデザインと読み替えることに無理はないでしょう。人工的なデザインだからこそ、都市ではなく田園に建てることにライトはこだわったそうです。自然あふれる北湯沢というロケーションもライトの狙いにかなったものと言えましょう。

 ところで南条さんは、このユースを大変気に入られたようで、自身の別荘にこれとそっくりなデザインを田上先生に依頼されたそうです。

上 1965年 ユース・ホステルシール
下 1966年 ユース・ホステルシール より

共に財団法人 日本ユース・ホステル協会 発行
デザイン 三宅茂福
この切手式シールは旅先から投函する手紙に貼ることを想定されているものであり、シールの販売金が協会基金や新施設の建設費、また既存施設の充実に用いられたそうです。

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