「新住宅 1964年8月号」「北国の住まい7 建設情報社1967年」より
招き屋根を重ねて「二重奏の家」と名付けた美しい家。ブロック造としながら、アピトンやラワンで優しい外観に仕上げてあります。玄関周りと門柱はザラついた大谷石貼り、テラスにはいつものパーゴラが立ち、フルコースの田上先生らしさに見応えを感じます。
ある日、この住宅が月寒公園付近に建てられたという情報を聞きつけました。しかし、公園の周囲に広がる道路をカーナビの走行履歴で埋めるように走破したものの、辿りつくことができませんでした。恐らくもう残っていないのだろうと、探索をあきらめました。
1969年の寒住法の施行まで、木造住宅建設のための融資は行われなかったそうです。ですから、この住宅の施主である島さんは、融資対象のブロック住宅で自分の家を建設することにしたのでしょう。この住宅の外観を眺めますと、島さんはブロック造でありつつも木造の味を存分に感じさせる設計を田上先生に求めたのではないかと思われます。