「田上義也建築作品抄=’64」 住宅サロン社1964年より
とても大きな和風住宅です。1階に2世帯が住むプランになっており、家の東西が23mもあります。じゅうたん貼りの階段を登れば2階には応接室とその隣に客間、さらにその隣には20帖もある小屋裏物置がありました。恐らくそこには、建主である水原さんの仕事関連の膨大な書類が管理されていたのだと思われます。
田上先生としては珍しく和風のデザインですが、水原さんからの要望があったのでしょう。田上先生らしいデザインは玄関まわりに表れていました。玄関ポーチが透明なガラススクリーンになっているところはまるで木製フレームの玄関フードのようです。北入り玄関のために対処したのでしょうが、潤沢な建設予算を思わせてくれる意匠です。その欄間部分には屋根なりの形で帝国ホテル風の五角形の窓がついていました。また、玄関まわりの壁面には穴あきブロックや大谷石を使って、素材感を求めているようでした。