宿泊してみようと思いながらもぐずぐずしていたら、先のシーズンで営業を止めてしまっていた美幌ユースホステル。
失われる前に最後の雄姿を記録すべく、道東への旅を決行しました。旅程の一番の訪問目的だったアイヌのチャシ跡に建てられたというこの建物。ひっそりとした建物を眺めていると、雄姿というよりもむしろ雌姿のように思われてきました。
1965年は田上先生の創造意欲大爆発の年であります。その集大成がこの美幌ユースホステルと思います。建物の対角方向に流れる深く鋭い大屋根は、本郷新アトリエとの類似が認められます。2階のバルコニーへ導かれるブリッジの端には、螺旋階段を包む筒があります。これは、尾崎邸の階段室を兼ねた煙突とのイメージが重なります。1階テラスの上に掛かるバルコニーを兼ねた庇は、植田邸Aで復活したライトのタリアセンデザイン。これらのエッセンスが入り混じった中に、いつもの陣笠が乗った煙突がそびえ立っています。誰にも咎められる恐れの無い状況で、心ゆくまま写真撮影に没頭しました。