田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1965

春香山の本郷新アトリエ

tanoue/1965年

小樽市春香町

辛うじて現存

大中中村組

田上義也建築作品抄 らいらっく書房1966年

 札幌市民に馴染み深い彫刻家、本郷新さんのために建てられたアトリエ付きの住宅です。片流れの屋根は、家の対角方向に流れていきます。深い軒が、両脇に至ってからは垂直に下ろされています。よって正面から見た姿は、私にはリーゼントをした男性の顔に見えるのです。田上先生がエルヴィスプレスリーに興味を持っていたとは思えませんが、時代背景的にも外れていないことからひょっとしてと思っていました。私の短絡的連想が発揮されてしまった例ですが、後日に別の想像も思い浮かんでき、悪い癖は留まることを知りません。

竣工当時田上義也建築作品抄 らいらっく書房1966年

現在(2010年)樹に登った永井杏奈

 カクカクして鋭い印象の外観を堪能して中へ入ると、ほの暗いホールに丸く優しい螺旋階段が現れました。その対比にドキリとします。痛みでギシギシ鳴る床を注意しながら進んでいくと、案の定、別の部屋から照井さんの悲鳴が聞こえてきました。

美しい螺旋階段

応接室の本郷氏

応接室の床を踏み抜くホッケン研 照井さん激写:永井杏奈

 現在この住宅は、荒れ果てて辛うじて残っているという状態です。開けっ放しの玄関から、勝手にキツネも出入りしているようです。暗い階段を登るときは、彼らのフンを踏まないよう注意しなければなりません。

 お酒が大好きだったという本郷新さん。ススキノで飲んだ後、ここまで帰ってくるのは余程難儀だったらしいと伝え聞きました。
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