高台のロケーション 2016年
昨日、サラリーマン時代の元上司だった石川さんにばったりとお会いしました。
挨拶や仕事の話など一切抜きで「山下!去年、50年前の家を改修工事したんだけども、いい家だった。デザイナーなんていない、大工しかいない時代の家だぞ!」と切り出されました。その昔、会社に海外研修旅行があったという時代に、ライトの住宅を見るためだけににシカゴへ行ったという石川さんのおっしゃることです。ふむふむとお伺いしていると、ナイスなキーワードが飛び出しました。
「片流れ屋根でヨォ・・・。誰の仕事かと思っていろいろと調べていたら、オマエのホームページにたどりついた。そしたら、おんなじ家が載ってるんダべや。」
おんなじ家とは、先に掲載した
N邸の事であります。
「段板だけの階段がきれいでヨォ。俺は手を入れるのはマズイと思った。」とお話が続いていきました。
ここまで伺えば、現地確認であります。石川さんからお伺いした住所へ現地入りしますと、荒々しい日本海とその向こうにすがすがしい暑寒別岳連邦を望んだ高台がロケーションでした。北東に向いたリビングから見えるその景色は、恐らく一番の設計ポイントだったでしょう。60年代中盤からスタートするリーゼントスタイルの定番の外観。冷却窓付換気口やテラス上のパーゴラが見当たりませんが、過去の改修で埋められたのでしょうか。
今まで何代か替わっているだろう住人、そして何度か繰り返されただろう改修工事の歴史の中で、こうして残り続ける奇跡があります。さらに、可能な限りに既存を残そうとする改修業者との出会いにも救われるのです。
「まったく、商売っ気がないのね。」と新しくお住まいになる方から笑われた石川さん、あっぱれであります。