八雲町公民館にも採用された幾何学アルミサッシ、片流れ屋根が2方向に分かれるデザインは
尾崎邸、建物角を持ち上げて飛翔感を出すのは
本郷新アトリエや
美幌ユースホステルと共通しています。これらの要素を取り入れながらコンパクトにまとまった北海道農業近代化コンサルタント、これぞ田上先生の傑作の1つに数えたいです。うれしいことは、しっかりメンテナンスをしながら使い続けられているということです。
建物の保存運動とは、壊される段になって対処し始めるのは手遅れだと思います。所有者さんが悩みつくしてもうこれ以上は維持できないと思い、解体やむなしと判断をしたのです。恋人から「ちょっと話があるんだけど・・・。」という電話を受けた時のあのザワッとした感触。今までたくさんのサインを見逃してきてしまったことに似ているようです。ここで手を打つには、全く手遅れなのです。
建物を大事に使い続けたいという気持ち。その価値観が地域や次の世代の人たちに自然に受け継がれていくことが私の理想です。
保存運動の力は、別れの気配が纏わりつかないように建物の魅力を発信する力に変化をさせるべきと思います。「考え直してくれ。これからは心を入れ替えるから。」というような保存運動は見苦しいものです。