田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1965

尾崎清美邸

tanoue/1965年

札幌市南区真駒内南町1丁目6-2

現存せず

柳谷工務店
 片流れの屋根が2方向に分かれた外観を持つ意欲作。トタン屋根は、地面すれすれにまで伸びており、後姿がエレガントです。屋根の途中には、暖炉の煙突を兼ねた大きな楕円の筒が飛び出しています。

北国の住まい6」 建設情報社1965年より

北国の住まい6」 建設情報社1965年より

 このような大胆な外観とは一転して、室内は静穏に包まれています。それまでの田上先生の内装デザインといえば、木肌を活かしたり、装飾を凝らして仕上げる事が大きな特徴となっていました。しかしこの住宅では、石膏ボードを下地にして禁欲的ともいえる白い塗壁の仕上げがされています。屋根なりに傾斜した天井が伸びやかで広い内部空間をつくりつつも、1段下がった隅にはホームバーがあって、洞窟風の心地良さそうな狭小空間でアクセントがつけられています。

北国の住まい6」 建設情報社1965年より

 私が田上先生の住宅作品の中で一番惹かれる尾崎邸。ひと目見てみたいのですが、今もあるのか、どこにあったのか、施主はどういう方なのか、一切わからないのです。

北国の住まい6」 建設情報社1965年より

2012.5.25

 後日談・・・
 上記を読んだホッケン研のハッシーが、1通のメールを送ってくれました。尾崎邸の掲載された記事が添付されていました。その記事に建築場所は「真駒内」と載っているではないですか。暗に、調査せよとの指令なのです。もちろん、ここまでヒントを頂ければ何とかなります。翌日、建築場所を特定し現地へ向かいましたが、やはりもうありませんでした。しかし、敷地にこの家の塀の一部が残っているのを確認でき、わずかな名残の発見に体が震えました。
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