田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1966

福祉センター眺湖荘

tanoue/1966年

虻田郡洞爺湖町洞爺湖温泉190-3

現存

田端組
 洞爺湖畔道路が小さな岬をかすめるように鋭くカーブするところにある建物です。眺湖荘という名前だけに、小高くなった敷地から湖を眺めることができます。ひとときは荒れ放題の廃墟だったらしいのですが、数年前より再活用されているとのことです。

竣工当時 1966年「北のまれびと」 現代出版社1977年より

現在 2014年

塔の内部「北のまれびと」 現代出版社1977年より

 元は福祉センターであり、現在は社会福祉法人の運営本部となっていますが、時を超えて福祉施設として使われ続けています。竣工時と現在の外観を比べてみると、車寄せを兼ねた玄関上のせり上がる庇が無くなっている事に気がつきます。坂倉準三さんの1964(S39)年枚岡市庁舎の玄関庇からの影響を感じますが、ひとまず省きます。たったこれひとつの事なのですが、年をとって落ちついてしまった元ツッパリの方のような印象です。

 玄関の後ろには大きな六角形の塔が控えています。水平連続窓をもつ主屋は、塔へ突き刺さるようにデザインされて、なかなか大胆です。塔の内部は、竣工時の写真によると外周部からキャンティーで支えられた螺旋階段になっているように見えます。ところで、塔はなぜ円形ではなく六角形だったのでしょうか。内部は螺旋の円形なのに外部をわざわざ六角形にするあたり、内部が素直に外部に現れるのを良しとする当時のモダニズムの基本精神に反しています、と思います、たぶん。しかし、六角形の作り出す形が他のデザインと調和して、折り紙細工のような影を作り出すことには成功しています。それなら尚更、内部は六角形の螺旋階段とするべきだったのではないでしょうか?まあ、素人の私がこれ以上口出しするのは止めましょう。

美しいコルビジェ風の北面

湖岸までは芝生が広がり、子供のように駆け出したくなる。

 建物から眺められる洞爺湖や湖畔は北側の風景となるため、いつも優しい光に包まれます。最高のロケーションにあるなずなのですが、実は湖畔の林が大きくなってほとんど湖を眺めることはできなくなっています。しかし、窓から樹々の緑を水平にみる景色も体験しがたい贅沢に違いなく、冬枯れの奥に静かな湖を通して見るのも趣深いことでしょう。
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