「北のまれびと」現代出版社1977年より
かつて、北海道インテリア研究所の山本信先生は、田上先生のデザインに惹かれる感覚とは、少し泥臭い親しみやすさにあるとおっしゃいました。この展望台、八角形の小さな室内空間の上にさらに大きな屋根をかぶせた形になっています。その屋根はまるでキノコのような傘型で、壁から持ち出した木材で端部を支えたデザインとしています。このような鋭い洗練デザインとは違う、ちょっと気易い雰囲気のことをおっしゃっていらしたのかも知れません。
わざわざ木造作で屋根を支えたデザインとして完成させたあたり、あえて複雑な線を求めたことが伺えます。大工の手仕事の跡が、親しみを感じさせるのかも知れません。木造のUFOみたいとか木造の遊具みたいなどと、口をついて出てしまいます。
この展望台に行ってみたいと思うのは、田上教信者なら誰にも異論のないところでしょう。しかし、これがどこにあるのかと調べてみても、なかなか突き止めることができませんでした。
ある日、国土地理院の1976年の空中写真を眺めていましたら、春香山のゲレンデの中に八角形の屋根型を見つけたのです。