田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1967

北海道銀行 洞爺クラブ

tanoue/1967年

洞爺湖温泉町

現存せず

三菱建設

「北のまれびと」 現代出版社1977年より

 国の文化審議会は2019年7月19日、建造物の登録有形文化財として、道内からは「函館公園こどものくに空中観覧車」、「網走市立郷土博物館の本館と新館」、「大野家住宅主屋」、「幌泉灯台記念塔」の5件を登録するよう柴山昌彦文部科学相に答申したという報道がありました。

 田上先生の網走市立郷土博物館が選ばれたことに理解はできましたが、新館を含めて認められたことに驚きました。「新館は窓の高さや形など本館の造りと連続性がある。いずれも独創的なデザインが認められた。」という理由です。この2言に注目しますと、本館と新館の連続性はわかりにくい点、優れたデザインとは言わず独創的なデザインと言っている点が非常に玄人的評価だと感じました。


 田上先生の魅力の1つが「独創的なデザイン」であることに異論はありません。


 私にとって、田上先生の独創的作品の最高峰は、北海道銀行洞爺クラブです。
 「フランクロイドライトのロビー邸が、まるでパルテノン神殿なんです。」
 これ以外にどう言えば良いのかという私の精一杯の説明は、まるで薬物中毒患者の虚言のようです。この写真を眺めていますと、柱を離れて空へ飛び立つのか、全世界が洪水に見舞われる時、選ばれし者達のみが乗船できる箱舟なのかという、めくるめく想像の世界へはまってしまうようです。


 この洞爺クラブを求めて洞爺湖周辺を走り回ったことがあります。しかし結局のところ、どこにも見つけられませんでしたし、どこにあったのかもわかりませんでした。


 ある日、こんな昔話を読みました。
 「1978年10月24日 北海道銀行健康保険組合保養所、有珠山泥流被害により閉鎖」


 泥流にポッカリ浮かんだ北海道銀行洞爺クラブ、ほんの束の間、本当に箱舟になったのかも知れないと思いました。

北海道 有珠山泥流災害調査より

 箱舟は、きっとこれだったに違いない。(想像)
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