塔の左側を書庫棟、右側を閲覧室の棟と明確に分けられた帯広市立図書館。屋上まで突き抜けた塔には書庫から搬出入される本のダムウェイターが備え付けられていたそうです。その天辺には時計がついています。腕時計が高級品とされていた時代、時計無しで外出しなければならなかった人たちにとって、どの建物に時計がついているかということは大事な情報だったでしょう。右棟の外壁には大きな四角状のパネルがついていますが、これは本をモチーフとした装飾だったそうです。

　帯広市には田上先生の作品がいくつかありまして、他にはこの図書館の向かいに帯広厚生病院が、そして藤丸デパートの２代目社長 藤本長蔵邸がありました。残念ながらどちらも現存しません。この図書館は新しい帯広市図書館が建設された2006年まで残っていたはずですが、これも見逃してしまいました。