田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1968

ホテルアカシア

tanoue/1968年

札幌市中央区南12条西1丁目

現存せず

竹中工務店

「北のまれびと」 現代出版社1977年より

 「アイヌ文様を象徴するデザインは、六層の建築に、ユニークで重厚な風格を保たしめており、内部は、和洋式がほどよく均衡し、豊富な色彩と、高級で、格調に富む設備、調度とが相まって、豪華な雰囲気をかもし出しており、本格的なホテルとして、多くのお客様のご愛用をたまわり、ご好評を博しております。」 (ホテルアカシア パンフレットより)

 アイヌ文様は連続模様なので、建築デザインとして活用しやすかったと思われます。田上先生は北海道開道100年を前に、アイヌ文様を幾つかの建物のデザインに使用しており、このホテルアカシアにはかなり積極的に採り入れました。また、6階のセットバックしたテラスには巨大パーゴラが架かり、アイヌ文様と相性良く彩りを添えていました。
 アイヌ文様といえば、紺地に白い線模様、そしてポイントに赤を使っているというのが私のイメージなのですが、このホテルに飾られたアイヌ文様部分は白いままで外部に付けられていました。あくまでも控えめに、決して主張することなく、さりげない採用です。私は、アイヌ文様を単純化してリデザインすることについて、当時のアイヌ民族の方々からクレームがつかなかったどうかという点が気になりました。ホテルの完成は1968年であるからして、まさしく北海道開道百年と同じタイミングでありましたが、そのような心配は無用だったようです。それは、床ヌブリさんにホールのレリーフを依頼したことで、問題とならなかったのかもしれないとも思われます。

題 ユーカラの詩

 教職員組合のための宿泊施設としては、かなり凝った内装です。1階ロビーの大理石張りの柱を見ながら床を眺めてみると、やわらかな感じがするので、いつものPタイルのデザイン貼りとは見えません。織物のような雰囲気と柄の大きさからして幅3640mm、こんな大柄が織れるのかどうかわかりませんが、これはやはり織ジュータンに違いありません。

1階ロビー 吹抜け壁面に床ヌブリさんのレリーフがかかる

1階 ラウンジ

3階 結婚式場

3階 大宴会場 はまなす

6階 スカイレストラン ぽぷら

客室

大浴場 (水車町方面を眺める・・・)

ホテルアカシア テレビCMより

 ホテルアカシアは小熊邸が存続に揺れていた頃、まだあったそうです。こちらには保存運動の展開はなかったそうですが、あのレリーフだけは現在のホテルライフォート札幌に移設されているそうです。
Top