田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1970

タカダビル

tanoue/1970年

札幌市中央区南4条西5丁目

現存

木田建業
 すすきの交差点から1丁西の交差点に建っている旧タカダビル。以前より何となく気になっていたビルで、2010年に足場に囲われたとき、これはイカン!と記録しました。どなたの設計かわかりませんし、どう見たら良いかもよくわからないのですが、解体される前に写真だけは撮っておかなければならないと思ったのです。

竣工翌年1971年「札幌市電が走った街 今昔」(札幌LRTの会 2003年)より 

 ビルは2層に重なった連続アーチの外観が独特の雰囲気で、パッと見では妙なスケール感に視覚が惑わされます。竣工頃の写真からは、屋上についた強烈なダイワハウスの特大看板と共にある様子が、お互いを高めあっているように見えました。

 このビルが田上先生の設計だと知ったとき、にわかには信じられませんでした。外観からは60年代風の田上先生の香りが消え、そばに立ってよく見ても、いつもの細部やお決まりの材料が見当たりませんでした。ところで田上先生は、この少し以前より体の不調を訴えられ、1970年に河邨文一郎さんに手術をしてもらい、その後しばらく入院されたことがあったそうです。ですからその頃より、デザインの権限が田上先生からスタッフさんへ徐々に移り始めたと推測されます。そうであれば、1969年の森邸1970年の谷口邸に共通する連続アーチのデザインは、スタッフさんの好みが出ているのかもしれないと思われました。
 足場は解体のためではなく、外壁塗装のためのものでした。足場が外れて現れた濃い緑色のインパクトにも驚きましたが、今こうしてよく見れば、外壁の構成にもハテナマークが浮かびます。これはカーテンウォールの外側にプレキャストコンクリートが取り付けられているのでしょうか。そうだとすれば、その構成の特殊さもまた不思議な外観を形づくっているようです。そして一流のコンクリート工事技術を持つという木田建業が施工を担当している点、さらに田上先生の仕事を初めて手掛けたという点も見逃せません。
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