田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1971

T邸

tanoue/1971年

札幌市中央区宮の森4条

現存

2011年

2014年 独特の後ろ姿が現れた 「売」看板は無関係

 宮の森の住宅街を低速走行で隈なく巡る。竹山実さんが設計されたという「黒の家」を通り過ぎたところで、その隙間の奥に後姿の片流屋根を見つけて急ブレーキを踏みました。大面積のトタン屋根を見つけると、心臓が止まりそうな感覚に襲われるのです。学生の頃、夢中になって幻の廃盤レコードを探しました。中古レコード屋でお目当てのブツに出会った時の意識の飛ぶ感じに似ているのです。これは常習性があり、大変危険な感覚であります。


 正面に回り、お顔を拝見します。大切に住まわれている様子に、お住まいの方の人柄がにじみ出ているようです。外壁が3色に塗り分けられたバランスに見惚れ、薄桃色って案外良いものだなと思いました。深い軒のシャープな端部が外観を引き締めており、かっこいいです。片流れ屋根は裏から見ると、脇でキュッと折られていてカツラのおじさんみたいです。襟足をバツッと切られているところが、ますますそんな風に思います。このころの田上先生らしい屋根の納め方であり、つい見つめてしまいます。いつもの冷却窓付換気口が軒下についていますが、付属のガラス窓が無いことに気がつきました。時代とともにデザインの細部も変わっていくのでしょう。
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