田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1972

イクサンダー大沼ユースホステル

tanoue/1972年

亀田郡七飯町大沼

2022年解体
 いつ営業をやめてしまったのかわかりませんが、ぜひとも行ってみたかったイクサンダー大沼ユースホステル。もともと基本設計では、敷地真北にある駒ヶ岳へ望むように配置されていたそうですが、後に道路の方を向くように西北西向きに修正されて完成したとのことでした。
 どっしりと構えた外観で、太すぎる2本のライト風柱型が、たいそう印象に残ります。そして、頂部についた菱型窓の美しさにいつまでも見惚れてしまいます。
 切妻屋根の頭頂内部は室内の温かい空気が一番集まるところで、この時代の断熱技術では屋根に雪が積もった時、屋根裏に結露が発生したでしょう。それが大量につくと、流れ出して室内に侵入してくるのではないでしょうか。建物の裏表の軒天についた菱形窓は、屋根裏を塩梅良く冷やして、それを防いでくれたことでしょう。

 この建物、イクサンダというアイヌ酋長の名を借りたということだそうですが、様々な資料ではインサイダー大沼ユースホステルと記されたものが多く、私は違法株取引用大沼簡易宿泊所と連想してしまいました。田上先生の作品説明書きには、テラスをテレス、キッチンをキチンなどと書いてあり、挙句の果てにはキャンティレバーをカントリーバー、あらら、田舎の棒となっています。書き取った人は建築用語を知らない人だったのでしょうと思っておりましたが、アメリカ人風に巻き舌でカントリーバーと発音してみれば、おや?こちらの方が正解ですか。テレスもキチンも、しっくりきますね。
 田上先生、きっとイクサンダをエキスンダウと発音し、インサイダーと書かれてしまったのでしょう。
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