見慣れないデザインの外観を正面に立って眺めただけでは、田上先生の作品だとは確信が持てませんでした。しかし、裏側へ廻ってみれば、縦型と横型に飛び出した窓、そして長い羊かんのような存在感の煙突に目が釘付けになりました。翌年の九島勝太郎邸や
高田孝三郎邸に通じる造形チックな雰囲気を感じました。
この高すぎる煙突の頂上にたなびくように乗っている陣笠。北風を防ぐように柔らかく曲げた形を見ると、撫ぜてみたい気持ちになります。このふもとには、暖炉があるに違いありません。
田上先生、宮ヶ丘ユースホステルの暖炉の設計で失敗をされ、竣工したばかりのユースホステル内部をすすだらけにしてしまったという伝説があります。ですから、煙突を太く高くしたのでしょうか。それとも、デザイン上の意図があったのでしょうか。竣工時の全体像を見てみたいです。そうすれば、この理由がわかるでしょう。