田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1973

渡部保夫邸

tanoue/1973年

札幌市南区北の沢

現存
 白い塗壁に丸みを帯びた銅板葺きを模したような屋根を持った渡部邸。この時期の高田邸滝沢邸に共通する雰囲気を持った外観です。70年代の建築には、住宅だけに限らずこのような白壁と緑色の屋根を持った建築を多く見ることができます。

 建主は裁判所判事だったそうですが、自宅の外観デザインに権威をまとわせることなく、柔和な感じを求めたかのようです。刑事事件において有罪よりも無罪の可能性を探索することに努力された方という人物評を伺って、さもありなんと思われました。

 北の沢という土地には、宮の森や伏見とは違って自然発生的に知識階層の方々が集まったようです。穏やかな町内に建つ渡部邸を見ていると、親切で公平な性格の方だったのではないかと思われました。

 時代の空気を取り入れた外観は、田上先生のセンスなのでしょうか。2階のバルコニーデザインには繰り返されてきた田上先生っぽさが見えますが、この頃の作品より、スタッフの個性が色濃く出てきたのではないかと思われます。そう考えると、中島公園のこぐま座との繋がりが感じられます。白い壁にウネウネした緑の屋根、これのどこが田上先生のデザインなのだろうかと思っていましたが、いきなりあの作品が出来上がったのではないと理解できました。この渡部邸や滝沢邸、高田邸などを根っことした系譜が感じられ、胸がすっきりしたのです。
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