田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1974

Iw氏壮瞥別荘

tanoue/1974年

壮瞥町壮瞥温泉

現存
 洞爺湖畔の道路を走っていると、私に響く住宅が登場します。ツノを持った屋根の外観に、標津町福祉会館やオホーツク水族館などと共通する田上チックな匂いを感じてしまいます。洞爺湖畔の住宅だけに、カルデラ湖の地形を屋根に象徴させたのではないでしょうか。

 ある日、やはり、この住宅が田上先生の作品だとわかったのです。

正面は常に逆光になるのが残念

凸凹の多い東面

ツノのデザインを後ろから見る

 洞爺湖地区は雪が少ないのでしょうか、一見無茶と見えるデザインの屋根に痛みは見えませんでした。恐る恐る近づいてみれば、1階のリビングは台形に張出しており、その上部にバロック風な飾りが付いているのを見つけました。いや、バロックではなく、洞爺湖のさざ波に違いありません。

洞爺湖のさざ波

リッチな玄関

 ひと気の無い別荘。レースカーテン越しに内部を拝見します。カウンターバー式のキッチンの奥には大きな厨房、リビングの中央にはスチール製のらせん階段が見え、特殊な空間が広がっていました。

 奥には、大きな玄関があらわれました。道路側の入口は勝手口だったのでしょうか。いいえ、厨房とは反対側なので勝手口ではありません。別荘建築のしきたりを知らない私には、なんとも謎の配置です。

 大きな玄関の壁は大理石で仕上げされています。花のようなオブジェの横にはスリットの色ガラスがはめ込まれていました。玄関やその上のテラスに侵入してきている山ブドウのツルが、なかなか良いお色気を加えていました。

 そして、柄の合った大理石の模様に目が留まります。柄の珍しい現れ方を活かして使ったのは明らかです。ミース・ファン・デル・ローエもびっくりです。
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