田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1975

丸紅緑ヶ丘分譲建売住宅第2期

tanoue/1975年

札幌市豊平区澄川5条13丁目付近

一部現存
 田上先生がデベロッパーの企画する建売住宅プロジェクトに乗っかるとは、一体どういうことなのでしょうか。
 オイルショックに大きく影響を受けた建築業界では、材料の高騰と不足で倒産に追い込まれる業者が続出したり、生き延びても受注減に翻弄されたそうです。田上先生もこの時期に仕事量が激減しているようでした。そんな世の中だったので、デベロッパーに足元を見られて設計を請け負ったのか、それとも自ら進んで企画に飛び込んで行かれたのか、つい想像をしてしまいます。

朝日新聞 1976年2月28日 広告記事

Googleマップ 2010年8月撮影

現在 2014年5月

 朝日新聞に掲載された広告写真を見て、体が固まりました。建売住宅とはいえ、例の片流れ屋根の外観に冷却窓付換気口が並んでいるではないですか。平屋に見えるかわいらしさに誘われ、すぐに緑ヶ丘エリアへ向かいました。写真に映る陰の具合から北方面へのアングルと見当をつけ澄川地区を隈なく廻りましたが、どうしても見つけることができませんでした。あきらめることなくグーグルマップストリートビューで建築場所を特定し、今も残っていた改修増築住宅にその名残を確認することができ、私の執着心は報われました。

建売住宅は5タイプ12棟が建てられていたらしい。もちろん、残る4タイプの確認も怠るわけにはいかない。

2棟発見 サイディングの改修程度にとどまっていて安心

 両翼を広げた外観の Iタイプは、過去のユースホステルの姿を思い起こさせます。玄関横の階段に光をもたらす縦長の窓が特徴で、付近に2棟発見することができました。

玄関横の階段窓の形状にKタイプとみた

恐らくこれもそうだろう  ?タイプ

 Iタイプ、Kタイプ、?タイプ、タイプ名不明の片流屋根を特定、本当はもう1タイプ残っているはずですが、これは潔く諦めました。同好の士がいらっしゃいましたら、結果報告を待ちたいと思います。

広告に唯一紹介されていた Iタイプ

 しばらくして見つけた最後のタイプ。
 分譲時にこの家だけポツンと建っていたことを古い住宅地図で見つけ、このたび現物確認いたしました。腰折れ屋根を重ねた姿、屋根勾配の角度、水平に持ち出された玄関庇、コの字型にでっぱった窓枠、軒天に付けられた菱形のガラリ付き換気口、これらの特徴から田上先生の仕事と判断いたします。
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