田上 義也 作品アーカイブス

tanoue/1978

サロマ湖畔ユースホステル

tanoue/1978年

常呂郡佐呂間町浜佐呂間サロマ湖畔

現存
 1978年のこと、日本ユースホステル直営施設としては最後となったサロマ湖畔ユースホステルが建設されたそうです。

2013年 湖畔道路から眺めた様子

宿泊棟を眺めたところ

玄関からホールに入ったところ

 中央にそびえたボイラー塔の右側は男女別の宿泊棟、左側には食堂棟のある外観です。一般的によくある木造ユースホステル建築とは違い、重厚な鉄筋コンクリート造です。しかし、屋根の見えがかりは落ち着いた木の仕上げが施されており、玄関からホールに入れば、初期のライト風ともいえそうな雰囲気に見惚れてしまいます。

 撮影の許可を関西出身のペアレントさんにお願いしますと「今日はアンタしかお客がおらんから、好きにしてええで!」」と、自由に撮らせていただきました。
 「こんなぎょうさん金のかかったユースは全国どこ探したってあらへん。けども、お客は少ないし、修繕費もバカにならんで。雨漏りを防ぐのにブルーシートを屋根に掛けてごまかしとるんや。」と、寂しい顔のペアレントさんです。
 「来年にはもう閉めよう思うとるんや。存分に写真撮ったらええで。」

立派な食堂

食堂の外観

一段下がって暖炉のあるカーペット敷きの 談話室

 食堂はなかなかの凝りようで、梁の架構と照明器具はライト風を狙いながらもモロを外した様子にニヤリとしてしまいます。食堂の外部は深い軒と窓の関係がロビー邸を思い起こさせ、辺りにライトお得意の花台があるのではないかと見廻しましたが、それはありませんでした。
 「アンタひとりやから、食事は談話室や。コタツで食べてくれ。」と、おいしいサロマのホタテ尽くしの料理を頂き、食後はポットの湯でセルフコーヒーを飲みました。

 私一人の為に沸かしてくれたのであろう風呂場へ案内をされた後、「そうや、だいぶ前に田上さんの研究や言って北大の先生たちが見えとったのを思い出したわ。」と、ペアレントさんは受付の方へ戻っていきながら、「明日は早いんやろ?わしらきっとまだ寝とるで、悪いけど一人で起きて出掛けてな。」と、子供っぽい顔で笑いながら手を振ってくれました。

私の部屋 (テレビとコンセントがあった)

裏より

ブルーシートで雨漏りを防ぐ

 翌朝、宿泊代をカウンターに置き、裏へ廻って写真を撮っていたら、後ろから声を掛けられました。
「田上さん、サロマ湖へ流れる地下水を考慮しとらんかったんやな。水が堰き止められて山側はぐちょぐちょやし、こちら側の痛みもえらい早いわ。」このユースホステルを気に入ってしまった私の様子に満足気なペアレントさんは車まで見送ってくれ、「うちらまだやってたら、また来てな。」と、別れの挨拶をしてくれました。
Top