グレイトーンフォトグラフス 酒井広司
現在は空中に浮いたバルコニーが囲われて部屋になっている。それにしてもリッチなバルコニーであった。 その天井がコロニアル風仕上げ。ここに越野先生ならではの足跡が刻まれている。
しかし、北に下がる土地へ素直に建物を配置すれば、北側が息詰まる空間になってしまいます。この解決には、北側にあたる部屋を地上から持ち上げ、太陽に向けた大きな窓をつけました。そして、その頃よく考えられていた「居間なるもの」に斬り込まれました。
「三点セットのある居間が団らんに結びつくという考え方は、どうも怪しい。居間とは本来はもっともっと多彩なものであるはずで、その使われ方も家族の生活の歴史と共にどんどん変わっていくものではないのか。」
この解決に、居間となるべき空間を3つの床レベル「上・中・下」に拡散・分割して秩序立て、あとは長い時間にわたる、住む人の勝手な暮らしを期待されたのだそうです。こうしてW邸はこれら2つのコンセプトをもたせつつ、施主夫婦と息子夫婦のために設計されたのです。お話をお伺いしますと、ますますその空間を体験してみたくなりました。
「お施主様からは苦情を聞いていないのだけれど、どうも息子さん御夫婦はご満足ではなさそうだ。訪問はどうかなあ。」
「ですが先生、外から見た感じではWさんは大事に住まわれているようです。改修したところもあるようですが、原設計を活かそうと配慮したように見えるのですが・・・。」
「・・・それなら一度、ご様子を伺ってみようか・・・。」
というわけで、本日お邪魔することができたのでした。
出迎えて頂いたのは、施主の息子さんであるWさん、つまり「あまりご満足ではなさそうだった御本人」と、その娘さんにあたるY子さんでした。