失われた建築

lost/2020

札幌松坂屋

2020年
解体

2020.12.31

札幌市中央区南4条西4丁目

2020年 解体

1974年

久米建築事務所

大成建設・竹中工務店・伊藤組JV
 2020年は札幌中心部のあちこちでビルの解体を目撃しました。年の瀬に指折り数えてみれば、同時に13棟が解体されていました。南北は南5条から北4条、東西は西1丁目から西5丁目までの50区画に1000棟のビルがあるとすれば、50年間ですっかり建替わるために毎年平均20棟のビルが建替わることになります。そう考えれば、肌感覚で多いなあと思った解体数も、まあそんなことはないということなのかも知れません。
 札幌中心部で大型建設工事を行うには、既存のビルを解体して広い土地を確保しなければなりません。解体工事だって建設と同等に時間がかかりますし解体業者も限られますので、何年も前から周到に段取りをしなければなりません。今、建築工事と解体工事はセットなのであって、建築工事だけでなく解体工事もダブル受注することで将来の利益を確実に確保していけるのでしょう。今後ますます建築工事件数が少なくなるでしょうから、大所帯のゼネコン組織を末永く生き長らえさせていくためには、この段取りがキーポイントになるのだろうと想像できます。
 
 この受注調整作業が上手にできるかどうか、組織の舵取り役の苦労は大変なものに違いありません。
 ところで、エレベーターから外を眺められるワクワク感、札幌松坂屋にはこれがあったのです。それまでのエレベーターは閉じた箱というのが当たり前でしたから、外を眺められるというだけで集客のネタになったことでしょう。この1年前に開業した東急百貨店にもあったのですが、私にとっては松坂屋の方が身近でした。静修学園前から路面電車に乗って母の買い物にくっついていた私には、終点ススキノで下車した瞬間に登場するのが札幌松坂屋だったというだけでなく、派手な4連式だったからなのです。また、外からエレベーターの昇ったり降りたりという様子を眺めることも離れがたい楽しみだったと思い出されます。
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