失われた建築

lost/2022

北海道ビルヂング

2022年
解体

2022.11.13

札幌市中央区北2条西4丁目

1962年

三菱地所

竹中工務店

札幌市創建100年記念誌より

 北海道ビルが建つ前、そこに何があったのでしょうか。古い地図を開いてみると、紙店や時計店、喫茶店に歯科医院、さらには理研計器札幌支店などの小さな建物が軒を並べ、山形屋旅館が北1条西14丁目に移った後も残っていた建物を飲食店として活用したものも確認できました。この頃の札幌駅前通りは、ひしめく木造建築が鉄筋コンクリート造のビルに置き換えられ始めた時代でした。ビルの建設を手掛けたい建設会社は受注競争にひた走ったことでしょう。建主や見込み客への営業や接待だけでなく、テクニカルな仕掛けも行ったようです。竹中工務店の都筑支店長は時計店の店主を説き伏せて、その権利をあらかじめ手に入れていたそうです。ここに新しいビルを建てようと企画した三菱地所は、建設予定地の一部が既に竹中工務店のものになっていることを知ったのです。こうして竹中工務店は自動的に建設の受注ができたそうです。

北海道ビルヂングの建つ前 絵葉書より

 三菱地所による北海道ビルの設計作業は東京で行われていましたが、竹中工務店北海道支店からも2名の応援職員が派遣されました。そのうちの1人が上遠野徹先生の先輩 中井一民さんだったそうです。その時代、コンクリートスラブのたわみ問題が心配事の1つだったそうですが、三菱地所のスラブ設計指針は厳重でダブルハンチ工法に大変感銘を受けられたとのことでした。
 さて、北海道ビルの内部はツルツルピカピカ状態が維持されていました。その華やかさを強調していたのが、この床デザインです。どのような仕組みでこの仕上げができているのかわかりませんが、隣り合う材料を金目地で縁取りした細やかな跡に、現在のビルには見ることのできない職人の手技を感じます。デザインのモチーフはまたしても六角形です。三菱地所による北海道厚生年金会館の六角形平面や札幌市役所の床タイルのデザイン貼りに共通する流れがここにもありました。試しに三菱マークを繰り返し展開させてスケッチしてみた私は、突然現れた六角形を見て心臓が止まりそうになりました。六角形を連続させるとその中にこっそりと三菱マークを隠したり表したりできることに気がついたのです。札幌市役所の床にまで三菱マークを埋め込んでいたとは、憎いねえ三菱〜。でもひょっとすると、本当に一色で組まれた三菱マークがどこかにあるのじゃないかと、市役所中を探し回ってみようと思うのであります。

札幌市役所の床に三菱マークが浮かび上がる

解体準備に入った北海道ビルヂング

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