失われた建築

lost/2023

NHK札幌中央放送局 元野幌送信所(江別市郷土資料館文化財整理室)

2023年
解体

2023.08.07

江別市大麻北町520−2

1957年

不明

不明
 江別市大麻の3番通りを走っているとドーム屋根のある円形の建物とアーチ型の建物が登場します。これらは1980年から江別市郷土資料館整理室として使われていましたが、元々は1957年に建設されたNHKラジオ放送所だったのだそうです。当時稼働していた月寒放送所では出力が弱かったため、東京・大阪・福岡に次ぐ国内4番目の大電力100キロワット放送所が建設されることになり、この元野幌(現 大麻北町)の地が選ばれたということでした。

 円形の形は国内放送関係のものとしては初めての試みで、放送機器の配置や操作性が良いことからドイツではよくある形式だったものを採用したそうです。また建設費も抑えられるという理由もあったようです。学校建築で円形校舎が増えてきた時代でしたから、円形デザインの採用に抵抗が無くなっていたのだろうと思われます。

2012年頃

 私は円形の放送所よりも、隣にポツンと建つアーチ型の方に惹かれていました。このアーチ建築は郷土資料館時代には倉庫として使われていましたが、元野幌放送所時代は発電機室だったそうです。わざわざコンクリート製のアーチを架けるという理由には、いかなる災いからも発電機を守り、非常事態時に放送を途切らせてはならないという使命が表れているようです。厳重すぎるようにも見えてしまうのですが、このアーチ型の設計者はそのデザインに神風的な願いも込めているような気がしてなりません。

NHK札幌中央放送局 元野幌送信所の完成予想図北海道新聞 昭和32年5月3日より

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