懐かしい風景

nostalgic/2012

建築探偵マネゴト記

2012.02.27

札幌市南区藤野
 戦後の北海道において優れた住宅デザインはどのように展開されてきたのだろうか。田上義也さんや上遠野徹さん以外にも試行錯誤された方がいたに違いない。そのような思いで古い建築本に掲載された北海道の住宅作品を見始めました。ある日、この写真を見てぺージをめくる手が止まったのです。
 それは、飯田勝幸さん(当時は北大工学部助手)が設計されたN邸でした。その特殊な外観に惹かれ、実際の姿を確認したくなりました。現存しているかどうか、写真にうつる背景の山々を手掛かりに市内を歩き回りました。
 果たして、藤野にその建築場所を特定したのであります。

N邸 竣工時 1962年 「北海道の建築」日本建築学会北海道支部 1976年 より

現在 2012年

 結局のところ、その住宅はありませんでしたが、敷地だったと思しき付近に横山尊雄先生(北海道大学工学部 名誉教授)のお宅を偶然見つけ、私の探偵心は大いに満足しました。

横山邸 竣工時 1963年 「北海道の建築」日本建築学会北海道支部 1976年 より

現在 2012年

 帰宅して、先述の飯田勝幸さんの仕事を調べていたら、「ショッピングモール四番街」という写真を見つけました。

「北海道の建築」日本建築学会北海道支部 1976年 より

 その昔、確かに札幌中心街のデパート前の歩道が、白黒2色のタイルで楽しげにデザイン貼りされていました。街中で買い物をする母に手を引かれながら白タイルをまたいで黒いタイルだけを選んだりと、下ばかり見て歩いていた子供の頃の記憶がよみがえりました。しかしこの割付デザイン、やたらと既存デパートの寸法と合っています。各デパートを詳細に実測して割付したのは言うまでもありません。しかし若いころの私には、しっかりと計画されデザインされたとは思いもよりませんでした。大まかなデザインモチーフがあって、あとは職人さんの感覚に任せて仕上げられているに違いないと思っていたのです。売上拡大を追い求める会社に属し、仕事とはどれだけ効率的に販売ボリュームを獲得するかだけを考えていた私には、考えられないことでした。ずいぶん後になってから真実を知った私は、デザインの仕事恐るべしと自分の無知に気がついたのでした。
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