建築年表 住宅編

1962

福田さんの家

1962年

札幌市中央区南17条西6丁目

現存せず

飯田勝幸

高島建設

新住宅 昭和37年8月号より

 吹抜のある立体的空間のある住宅が札幌で見られはじめるのは、田上先生による更科源蔵邸の1956(S31)年、上遠野先生による栗谷川健一邸の1959(S34)年あたりではないかと思われます。飯田勝幸さんもこの福田邸で吹抜空間を取り入れられましたが、先の2軒が流動的な空間を得るという目的に対して、少し違う観点もあったようです。

新住宅 昭和37年8月号より

 福田邸は医院に接続した住宅なのですが、1階に老夫婦、2階に若夫婦と子供部屋のある2世帯住宅で、吹抜空間を各々の共有的憩い空間にされようとしていました。

新住宅 昭和37年8月号より

 すまい部分と医院部分の間にかなり広い光あふれるサンルームを設け、これを取り込むように吹抜の居間が置かれています。視線が縦方向にも横方向にも十分に伸びていき、大らかな空間となっています。冬には奥の台所との間にある暖炉から温められた空気が住宅いっぱいに広がる仕掛けとなっていて、快適な暮らしだっただろうと思われます。

新住宅 昭和37年8月号より

 和室と居間の間にも3帖の緩衝空間、2階には吹抜を見下ろせる小部屋があって、大きな住宅ではなくともリッチな暮らしを営めそうな工夫がされています。これらのちょっとしたゆとり空間が居間の周りにあることで、ますます効果的になっているようです。
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